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外交アジェンダ - 21世紀の米国の外交政策
東アジア・太平洋地域
米国国務省 クリストファー・R・ヒル
世界の中で、東アジアほど、米国に利益をもたらし、課題を与える可能性を持った地域はない。この地域には、われわれにとって最も強固な安全保障と貿易のパートナーである国々があり、確立された大国である日本と、大国として台頭しつつある中国があり、そして、他の地域の羨望の的である活発な政治・経済がある。この地域は、人口では世界全体の3分の1、GDPでは同4分の1、成長率では世界において不均衡に高い割合を占めている。さらに、米国の輸出の26%は同地域に向けられたものであり、農業輸出先としては、およそ37%を占めている。米国の同地域を対象とした輸出入貿易総額は、8100億ドルにも上っている。地政学、軍事、外交、経済、そして貿易といったあらゆる分野において、東アジアは米国の国家安全保障にとって、極めて重要な存在となっている。 米国の長期的、戦略的な外交政策における優先事項を見ると、その核心は、非常に単純明快である。われわれが望んでいるのは、民主的かつ豊かで安定した、安全な、そして平和な世界の実現である。米国の対東アジア・太平洋地域政策は、こうした世界規模の目的に沿ったものであり、この基本的な目標を達成するために、われわれは同地域で広範囲に活動を実施している。 好ましい動向 この1年間、私は東アジアのさまざまな地域を訪問し、変革の力強い波が起こっているのを目の当たりにしてきた。例えば、2004年1月以降、オーストラリア、日本、マレーシア、モンゴル、フィリピン、シンガポール、韓国、および台湾といった安定した民主国のみならず、新たに民主化が行われた、イスラム教徒が過半数を占める国の中で最も人口の多いインドネシアにおいても、民主的な選挙が成功裏に行われた。 さらに、中国の急速な発展と、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国における1990年代末の金融危機からの広範囲に及ぶ回復基調に推進されて、同地域全体に繁栄と経済機会の高まりが見られる。同地域の経済は、経済的開放の拡大、貿易障壁の削減、そして地域内の協力に向けて前進している。収入のレベルは向上し、全体的に極貧層が減少している。2005年の世界経済において最も急速な成長を遂げている国々のうち数カ国は東アジアの国々である。 今日、東アジアの大部分の地域は平和的状況にある。同地域内では過去25年以上にわたり、大規模な軍事紛争はただひとつも起こっていない。テロリストによる攻撃が散発的に発生しているが、テロリズムへの拒否反応が広がりを見せている。 東アジアが政治的・経済的に台頭していく中で、地域としてのまとまりも出てきている。アジア・太平洋地域経済協力会議(APEC)フォーラム、ASEAN、およびASEAN地域フォーラム(ARF)といった地域の主要機関を通じて、政治的、経済的、および文化的地域協力が拡大している。
今後の課題 こうした良好な動向の反面、いくつかの脅威も依然として残されている。それらの中で最も重大なものは、北朝鮮情勢である。北朝鮮政府は、核兵器の実験を行い、引き続き国際社会に挑戦している。北朝鮮のこうした挑戦に対処するため、同国の核開発プログラムを永久的に、完全に、かつ目に見える形で放棄させることを目指し、われわれは6カ国協議の枠組みを設定した。 われわれは引き続き、進展する中国・台湾関係を注視していく。1972年、1979年、および1982年に米国と中華人民共和国(PRC)が発表した3つの共同声明と、1979年に議会が可決した台湾関係法に沿って、「ひとつの中国」政策を継続していく。われわれは台湾の独立を支持しておらず、現状に変化をもたらすことになる中国あるいは台湾のいずれかによる一方的行動にも反対する。われわれは、中国・台湾間にある意見相違の平和的解決を、武力の脅威やその使用によることなく、海峡を挟んだ両国民が受け入れられる形で行えるよう、直接対話を進めることを両者に求める。 東アジア地域全体で、テロリズムがすべての政府に脅威をもたらしており、こうした脅威に対抗する最善の方法は、各国の協力によるものであるとの認識が高まっている。また、われわれは、マラッカ海峡の極めて重要な貿易航路の安全を確保する国家的責任を有するこの地域の国々が、海洋法の執行能力とそれに向けた協力関係をより強化するための援助手段を引き続き模索している。 最後にわれわれは、この地域の同盟国および友好国と協力し、ビルマの国家的な和解と民主化を促進しなければならない。同国が国際社会から孤立し続けていることは、この地域、特にASEAN諸国にとってますます深刻な問題となっている。 変革を伴う外交
米国の外交をより効果的に行うため、コンドリーザ・ライス国務長官は、国務省の業務を改善するプログラムに着手した。ライス長官は、この「変革を伴う外交」を、「それぞれの国の国民のニーズに対応し、国際的な制度の中で責任ある行動をとることのできる、民主的な優れた統治国家を築き維持するために、世界中の多数の国々と協力する」ことであるとしている。そして、この取り組みには、広範囲かつ活発な市民外交プログラム、すなわち、外国の一般市民を理解し、彼らに対する情報提供や啓蒙を行い、米国民や諸機関と他国の国民や同様の機関との間の対話を拡大することを通じた、米国の国益と安全保障の推進が不可欠である。 2国間の関与 民主化を推進し、優れた統治および国際システムにおける責任を向上させるという、変革を伴う外交の目標に向けた活動を検討するに当たり、中国への関与ほど、大きな課題、あるいは報奨をもたらす可能性を持つものはない。 米国の東アジアにおける長期戦略ビジョン達成の成功は、地域および世界における大国として台頭しつつある中国の役割に大きく依存する。米国は、自信に満ちた、平和な、そして豊かな中国を歓迎する。中国が、国際システムにおける責任ある一員として、一層重要な役割を果たしていくことを、われわれは望んでおり、その目標に向けて努力している。 中国同様、東南アジアも急速に変化しており、多くの国々が経済発展と繁栄の道をたどっている。東南アジアは、同地域の人々が進めている改革を支援する米国の変革を伴う外交にとって、豊かな基盤を提供している。そして、こうした改革は、同地域の民主化の促進と優れた統治の実現をもたらし、広範囲の基盤に支えられた持続可能な経済発展を促進し、社会基盤を強化するとともに、同地域をより強固なパートナーとするものである。 その典型的な例がインドネシアである。同国は、30年以上に及ぶ独裁的支配から脱却し、世界で3番目に大きい民主主義国家となった。2004年に、スシロ・バンバン・ユドヨノ氏がインドネシア初の、直接選挙で選出された大統領となった。彼は、野心的な改革に着手し、腐敗との闘いと、インドネシアで誕生したばかりの民主制度の強化に努めるとともに、同国の発展と安定のために不可欠な、持続的な経済成長の基盤の構築を図っている。 さらに、われわれは、ここ数年間、カンボジアおよびベトナムによる地域機関および世界経済への完全参画と、国民の生活を向上させる諸改革の実施を目指した取り組みに対し、相当の時間、労力、そして資源を投資してきた。2006年11月にベトナムでの開催が予定されているAPEC首脳会議では、活力ある地域の勢力としてのベトナムの成長と、米国とベトナムとの友好的2国間関係の一層の推進という両方の課題に焦点が当てられることになる。またわれわれは、すでに米国の貿易相手国として第10位であるマレーシアとの関係強化に向けて、同国との自由貿易協定交渉を開始している。 地域における関与 アジア・太平洋地域において見られる好ましい動向のひとつとして、各種の地域機関の発展など、地域内協力の高まりを挙げることができる。われわれは、多国間での取り組みによってより効果的な成果を得られる、共通の関心事項について話し合いを進めるべく、こうした諸機関への関与を拡大している。 われわれは、アジア・太平洋地域の安全保障と繁栄を促進するため環太平洋の21カ国・地域が協力して作業を行う機関として設立された、アジア・太平洋経済協力会議(APEC)フォーラムに深く関与している。米国が、貿易および投資の自由化を推し進め、鳥インフルエンザ流行の脅威への対応や地域内での安全な貿易の確保といった多国間協力を必要とする諸問題に取り組んでいく上で、APECは主軸となる組織である。 また米国は、安全保障問題に重点を置いた、東南アジア地域唯一の、広範囲の国々が加盟する機関であるASEAN地域フォーラム(ARF)にも積極的に参加しており、ASEAN・米国間のパートナーシップ強化について、ASEAN加盟国各政府との話し合いを始めている。この話し合いでは、政治・安全保障、経済、および社会文化の諸問題についての新たな協力関係などが議題となる予定である。 太平洋地域のプログラムについては、われわれは主として、太平洋共同体や太平洋諸島フォーラムなどの地域機関を通じて、太平洋地域の22カ国・地域に対する経済的、技術的、および開発支援を提供し、これらを積極的に支援している。 われわれは、今後も引き続き、東アジア首脳会議(EAS)に注目し、同会議と、われわれが積極的に支援し参加している同地域のさまざまなフォーラムとの関係、そしてわれわれが目指す地域の目標との関係を理解するよう努める。
同盟関係およびパートナーシップの強化 地域の平和と安全保障に対する脅威に対抗するため、ブッシュ大統領は同盟関係の強化と再活性化を強調してきた。米国とこの地域の5カ国の主要同盟国ならびに主要パートナー1国との関係は、2001年以降大きく進展しているが、この前進を引き続き維持するためには、今後かなりの時間を費やすことになる。 米国とオーストラリアは、長年にわたり最も緊密な同盟国として協力関係を保っており、現在、両国の関係はこれまでで最も良好な状態にある。オーストラリアは、アフガニスタンとイラクで米国を支持し、紛争への軍隊派遣を行い、復興活動において重要な役割を果たしている。両国は、核拡散防止、対テロ活動や国際人身売買の防止、およびその他の国際的問題へのコミットメントを共有している。 日本については、ブッシュ大統領は、「この地域の平和と安定の推進力であり、国際社会の重要なメンバーであるとともに、米国にとって信頼できる同盟国である」としている。われわれは引き続き、日本との緊密な協力の下、地域内、そして世界全体で両国の相互利益を推し進めるために、両国関係をより成熟したパートナーシップへと発展させ、日本がますます効果的な役割を果たすことができるよう取り組んでいく。 米韓関係は、韓国が、その経済水準に見合った政治的役割を国際的に果たし始める中で、当初の安全保障上の理由を超えた関係へと移行しつつある。同国は、イラクにおける国際軍事作戦では、3番目に大きい規模の軍隊を派遣しており、また米韓両国は、2国間自由貿易協定交渉を始める決定を下した。この協定が締結されれば、韓国はカナダ、メキシコに続いて米国にとって3番目に大きい自由貿易相手国となる。 タイとフィリピンは、両国とも非NATO主要同盟国であるとともに、テロとの戦いにおける重要なパートナーである。タイは、アフガニスタンならびにイラクにおける連合軍作戦に部隊を派遣しており、自由貿易協定の交渉相手国でもある。また、米軍とフィリピン軍は緊密な協力関係を有し、フィリピンの防衛体制の近代化を目的とする「フィリピン防衛改革」と名付けられた数年間に及ぶ計画を、共同出資により進めている。 シンガポールは、条約同盟国ではないものの、ますます親密なパートナーとなりつつあり、同国との取り決めによって、米国は主要な輸送ルートにおいて戦略的に重要な位置を占める世界有数の港湾および空港施設を使用することができる。また、シンガポールは、マラッカ海峡およびシンガポール海峡を抜ける極めて重要な海路の安全性を守るための地域の取り組みにおいても、積極的な役割を果たしている。 結論 われわれは、東アジア・太平洋地域全体で、安定、安全保障、および平和を強化し、民主主義と繁栄の機会を拡大するという目的を達成するために、前進している。 今回の訪問を終えて、私は、いくつかの困難な障害があるものの、上述したような好ましい状態を今後さらに発展させることができる、と楽観している。 詳しくは下記を参照: http://www.state.gov/p/eap/ http://usinfo.state.gov/eap/
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