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ジャン・ビトルド・バラン
![]() 2006年8月、選挙運動中、オハイオ州マウント・ギリアドの喫茶店で、有権者に政見を述べるシャーロッド・ブラウン上院議員候補。
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次の米国大統領を目指して、選挙運動を始めている候補者は、2007年夏の時点で、20数人に及んでいる。大統領選挙それ自体が実施されるのは、2008年11月4日だが、候補者たちは、各自が所属する共和党なり、民主党からの指名獲得を目指して、運動をすでに開始している。それぞれの政党の候補者が、正式に党の候補者として指名されるのは、2008年夏の党大会においてであるが、候補者たちは、2008年1月に始まる予備選から、代議員を獲得するための戦いを始めなければならない。この長く、厳しい戦いで候補者に求められるのは、選挙戦の経験と、強靭で疲れを知らない肉体だけではない。巨額の資金も必要である。
連邦政府の公選職は、大統領、上院議員、下院議員である。この3者が、首都・ワシントンDCの大統領府の公選職と上下両院の議会を構成する。これらの公職を選ぶ選挙運動は、連邦法の規制を受けているが、この連邦法では、選挙運動の資金調達方法や、献金者、献金額などについても規定している。選挙資金の規制に関する連邦法は、州知事、市長、州議会議員などの、州や地方自治体の公職の選挙を規制する州法とは別である。従って、連邦政府の公職に立候補する者は、連邦法に従う必要があるが、連邦法は、多少複雑で制限的である。大統領選の立候補者は、1億人を超える全米の有権者を相手にした選挙運動を展開することになるが、これには、数億ドルの選挙資金を調達する必要がある。その資金の調達方法と、その使途は、厳しく規制されている。
大統領選の立候補者は、政治委員会と呼ばれる選挙運動団体を設置する必要がある。政治委員会は、財務担当を置き、連邦選挙委員会(FEC)に登録しなければならない。選挙委員会という名称にもかかわらず、FECは、選挙資金関連の法律の施行と監督を行うだけで、実際に選挙を実施するわけではない。米国では、有権者登録や選挙の実施、票の集計という選挙の手続きや事務は、地方自治体の選挙管理人の責任である。
FECには、さまざまな種類の政治委員会が登録されている。候補者に加えて、各政党もそれぞれの委員会をFECに登録しなければならない。さらに、一般市民団体も、政治委員会を設立することが認められており、これには、企業、労働組合、職業別組合などに属する個人も含まれる。こうした政治委員会は、政治活動委員会(PAC)と呼ばれることが多いが、これもFECに登録する必要がある。
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選挙資金とその監視の問題に取り組むよう連邦選挙委員会(FEC)に訴える、ハワイ州共和党委員長・サム・アイオナ氏。
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登録を済ませると、政治委員会は、選挙運動の資金調達を始めることができる。集められた資金は、すべて、その使途も含めて、3ヵ月ごと、あるいは、毎月FECに提出する報告書により、情報公開されなければならない。報告書の提出は、オンラインで行なわれ、FECのウェブサイト[http://www.fec.gov]で公開されている。FECだけでなく、数多くの民間団体がウェブサイトを設けて、立候補者や政党、PACへの献金や資金の使途を監視している。
連邦政府の公職、あるいは、政治委員会への献金は、すべて、個人か、あるいは、FECに登録している委員会からのものでなければならない。企業や労働組合は、個人から寄付を募るPACに対して、一定限度の資金援助することは認められているが、公職者や政治委員会に、直接、献金することは禁じられている。PACに対する現金による寄付の限度額は、100ドルで、これを超える寄付は禁止されている。
同様に、外国人、つまり米国への永住権を認められていない非市民からの個人献金も違法である。しかし、永住権を持つ外国人市民の場合、選挙で投票はできないが、献金は認められている。
公選職に立候補して選挙運動を行なうために、候補者がやらなければならない仕事は、いろいろある。すなわち、選挙スタッフを雇う、選挙事務所を設営し、遊説日程を組む、各種の調査をする、政策をまとめ、ラジオ、テレビに出演して訴え、文書の出版や、インターネット上で宣伝する、数多くの公式行事に顔を出し、資金調達のイベントを主催することなどである。下院に立候補する者は、自分が属する下院選挙区でこうした活動を行ない、上院に立候補する者も同様に各自の選挙区で活動を行なうが、上院の場合は、州全体が選挙区になる。
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カリフォルニア州・第53選挙区から立候補したマイク・ゴードン下院候補者が、運動のボランティアと戦略を練る。 |
大統領選の立候補者に待ち受けているのは、まず州から州へ、そして党の指名を受けた後は、全米に選挙運動を展開するという気の遠くなるような仕事である。大統領選の第1段階、つまり、党の指名を獲得するためには、最初に予備選が行なわれる州に、焦点を合わせて活動する。従って、候補者は、まず、アイオワ、ニューハンプシャー、サウスカロライナ、ネバダ、フロリダの各州から、選挙運動を展開するだろう。これら5州は、すべて、2008年1月に、党員集会か、あるいは予備選挙を実施する予定である。以前は、この5州以外の予備選挙は、6月末までに一通り終わるように実施されていた。しかし、2008年には、カリフォルニア、ニューヨーク、テキサスなど有権者の多い州を含めて大半の州が、2月5日に予備選を予定している。予備選の期間がこのように大幅に短縮されたことにより、選挙陣営は、―― 最低、1億ドルとも推定されている ―― 巨額の運動資金を工面して、予備選を乗り切らなければならないという状況に追い込まれている。各選挙陣営の委員会は、FECに対して、財務の内容を開示する必要があるので、献金の金額とその使途は、公式記録として残る。こうした財務報告書の中でも、とりわけ、2007年から2008年1月までの記録は、各候補者が実際の投票の前に、どの程度の支持を集めているかを示す指標になると広く見られていることから、「運動資金の予備選」と呼ばれている。
1976年以降、大統領選挙に立候補する候補者は、米国政府が一定の条件を満たす選挙運動に対して補助金を与えている公的な資金助成制度に参加することができるようになっている。2000年の選挙までは、大統領候補に指名された候補者全員が、一定額を超えた選挙資金を使わないと約束した上で、政府から補助金を受け取り、この制度に加わっていた。しかし、候補者にとって、この制度の魅力は、次第に薄れてきた。設定されている支出の限度額が低すぎるからだった。それは、有力候補なら、民間から容易に調達できる金額にも及ばない水準だった。その結果、2000年当時、州知事だったジョージ・W・ブッシュ氏は、予備選で公的資金の申請を見送った最初の有力候補となった。その4年後、共和党のブッシュ大統領、民主党候補のジョン・ケリー上院議員とハワード・ディーン州知事(バーモント州)は、予備選で公的資金を辞退した。2008年は、民主・共和両党の有力候補のうち、民主党のジョン・エドワード候補を除く全員が予備選で公的資金を辞退する初めての年になると予想されている。民主・共和両党の最終候補者は、大統領選の本選に向けた運動中も、公的資金を使わない可能性が高い。
2008年の大統領選の選挙運動にどのくらいの金が使われるのか、総額を予想することは難しいが、ひとつ確実に言えることは、これまで以上の金額が使われるということだ。2004年にブッシュ大統領は、予備選に向けて2億7000万ドルの献金を集め、本選挙では、7500万ドルの公的資金を受け取った。ブッシュ大統領と最終的に戦った民主党の対抗馬のケリー上院議員が予備選で集めた献金は、ブッシュ大統領のそれに迫る2億3500万ドルで、本選挙ではブッシュ大統領と同じく7500万ドルを公的資金から受け取った。2008年大統領選の立候補者数は増えているが、同じく献金の限度額も、(2000年の2000ドルから2300ドルに)増額されている。選挙運動に献金する国民の数も増えている。これは、選挙運動のウェブサイトを通じて、オンラインで献金できる手軽さによるものである。
選挙に金をかけるのは、立候補者ばかりではなく、政党やPAC、そのほかの利益団体も金を使う。2004年、Center for Responsive Politicsがまとめた推計によると、連邦政府の公選職への立候補者や政党、そのほかの人々が、同年の選挙運動に使った資金の総額は、39億ドルである。この金額は、前回の大統領選挙が行われた2000年と比べて、30%増加している。2008年の選挙で使われる金額は、これを上回る可能性が高い。



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