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2008 Election
大統領選挙戦の取材:プレスバスからの眺め

ジム・ディッケンソン

アイオワ州をバスで遊説する候補者を、プレスバスの中で撮影し、質問する報道陣(2004年1月)
目 次
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ベテラン政治ジャーナリストが、米大統領選候補の遊説に同行する記者の生活の内幕、および米国民への候補者のメッセージ伝達における記者の役割について語る。遊説取材の毎日は長く、様々な行事が詰まっている。選挙運動スタッフやアドバイザーと適切な方法で友好的な関係を築ければ、彼らは貴重な情報源となる。各遊説先での取材は当然の仕事であるが、プロのジャーナリストは常に予想外の出来事や突発事件への対応に備えていなければならない。筆者のジム・ディッケンソンはワシントンポスト紙の元政治記者。

選挙運動の長い1日の終わりに、「バイブル」の名で知られる、同じように長い1日となる翌日の予定表が、報道陣や選挙運動スタッフおよびアドバイザーなど関係者全員に配られる。飛行機から降りる時に渡されることもあれば、宿泊しているホテルのドアの下に差し込まれることもある。典型的な1日は次のように始まる。

このように、1日中、数多くの行事と移動がある。商工会議所・ロータリークラブとの会合は、何はともあれ、ホテルのコーヒーショップで大急ぎで朝食をとる時間があるかどうかを心配する必要がないことを意味する。(選挙運動取材の鉄則は、機会があったら必ず食べること。というのも、スケジュールよっては、食事をとれなくなるからだ。)KXYZの代表取材記者団からは、文書による「フィル」、つまりKXYZでの発言や行動についての報告が入ることになっている。代表取材は時間、場所、およびその他の事情で、報道陣全員を収容できない行事の場合に行われる。代表取材団には通常、日刊紙記者、テレビ・レポーター、報道雑誌記者、通信社(APまたはロイター)の記者がそれぞれ1人ずつ含まれ、すべての同行記者が順番でその役目を果たす。

記者にはそれぞれ異なる優先順位と企画がある。「バイブル」は、そのような記者全員がその日の計画を立てられるよう、選挙運動スタッフが作成する極めて詳細な文書である。その日のニュースのリードになりそうな主要行事は何か。記事を書き、送信するための時間はスケジュールに組み込まれているか、また、それが適切な時点に設定されているか。記者のほとんどは、地理的条件や自社の製作スケジュールの違いから、記事の締め切り時間が異なる。解説記事を書くため、候補者のスタッフを捕まえて話を聞く必要があるが、そのために取材を飛ばしても良い行事はあるか、など「バイブル」からその日の詳細を把握するのである。

米国の大統領選挙は、多くの人々を巻き込んだ、複雑で入り組んだ踊りのようなものである。関係者すべてにとって、それは長い、苦しいプロセスであるが、その厳しさは人によって異なる。たとえば、予備選挙で3位、4位、あるいは5位につけている候補者は、1日の予定に可能な限り多くの行事を詰め込もうとするだろう。特に小さいが非常に重要な州であるアイオワ(全米で最初の党員集会)やニューハンプシャー(最初の予備選挙)においては、「小売政治」、つまり有権者との直接的な接触が不可欠であるばかりかそうすることを求められている。

選挙戦取材に備えて

候補者が遊説に向かう飛行機に同乗して出発するかなりに前に、私はその陣営のスタッフの顔ぶれを調査してある。有給のコンサルタント、メディア担当者、世論調査専門家はだれか。尊敬される元公職者、活動家、あるいは「政策通」(政策専門家)として、強い影響力をもつ無給の非公式アドバイザーはだれか。

アイオア州ダベンポートに到着する遊説バスを撮影するテレビカメラマン(2004年10月)

また、その陣営の選挙運動戦略も、私は自分のことのように把握している。伝統的に早い時期に予備選挙が行われるアイオワ、ニューハンプシャー、サウスカロライナなどの州にどの程度の力を注ぐのか。ニューヨーク、カリフォルニア、フロリダなど影響力の大きい州を含む多数の州で予備選挙が同時に行われ、本選挙投票日の9ヵ月も前に、各党の大統領指名候補が決まる可能性のある2008年2月5日の新しい「スーパー予備選挙」に、陣営としてどう取り組むのか。その候補者がどの州で強く、どの州で弱いのか。各州のどの地域で、異なる候補者がそれぞれ強いのか、弱いのか。こうした細部が、アメリカ国民が下す最も重要な決定、すなわち大統領選びの基本的な構成要素になる。

我々報道陣は、この選挙プロセスにおける重要な要素のひとつである。政党が衰退し、同時に、予備選挙の意義が増すことになった。メディアは候補者を早い段階で選別する役割を担うようになった。その機能のひとつは、各候補者の政策、知性、気質、正直さ、判断力、組織能力、説得力といった個人的特徴、および大統領という職務への適性を評価し、有権者が十分な情報を得た上で、この重大な問題についての判断を下せるよう手助けすることである。我々はこの役割を、ジョン・F・ケネディがリチャード・ニクソンに勝った大統領選に関する有名なベストセラー、セオドア・ホワイトの「大統領への道」(The Making of the President 1960)の刊行以来、常に真剣に受け止めている。

情報源との協力

良い情報源になり得る選挙運動スタッフやコンサルタントと友好的な関係を築くことは、政治記者にとって最優先事項のひとつである。人の性格を見極め、付き合い、駆け引きをする、今行っている活動である。最も重要なことは、陣営内で何が起こっているかを本当に知っていて、それを話してくれる情報源を特定することだが、この2つの条件をともに満たす人物は、陣営内でも大統領執務室でもまれである。この目的では、候補者の長年の忠実な支持者よりも、外部から起用された専門コンサルタントのほうが役に立つ。というのも、我々記者もそうであるが、専門コンサルタントは将来の選挙戦にも再びかかわる可能性が高く、お互いを必要としているからである。

大統領選への出馬表明後、夫人およびスタッフと遊説バスでニューハンプシャー州ポーツマスからコンコードへ移動するジョン・マケイン上院議員(2007年4月)

私はまた、選挙運動でのキャリアや個人的な投資にではなく、国政への関心の高い無給のアドバイザーを評価する。ある民主党候補の選挙戦で、ケネディ家の大統領レースにもかかわったことのある愛想の良い老練な政治活動家と仲良くなった。遊説取材中に何度か夕食をともにしたほか、バーで一杯やることもあった。ある時点で、彼は陣営の選挙運動の誤りと見込み違いにもはや我慢できないと判断した。この話を正しく記事にし、情報源を守ることが私にはできると彼は信じて、陣営内部の重要な見方を「背景説明」として、つまりその情報を使っても良いが、名前つきで引用したり、人物を特定したりしないという条件で、長時間にわたって話してくれた。その結果、私のこれまでの選挙戦分析記事の中で最高のものをいくつか書くことができた。

1988年、私はワシントンポスト紙に在籍しており、南部の数州が大統領候補指名における地域の影響力を高めようと同じ日に予備選挙を行った、いわゆる「スーパー・チューズデイ」の予備選挙で、当時上院議員だったアル・ゴアを取材した。(彼はこれら南部諸州ではよくやったが、続く北部諸州の予備選挙を戦うための資源を欠いた。)生まれ故郷のテネシー州で、ゴアは最先端技術を備えた新設小児病棟を持つ病院に立ち寄った。そこには、当時アーカンソー知事だったビル・クリントンが待っていた。クリントンとインタビューするため、私は病院視察の取材を取りやめた。クリントンとは以前会話を交わしたことがあり、彼が卓越した、近づきやすい政治分析家であることを知っていた。そのインタビューは、時間を費やす価値が十分にあるものだった。病院視察の取材については、競争関係にない中西部の新聞の記者にその模様を教えてもらうのと引き換えに、クリントン関係の情報を提供することで話をつけ、その場をしのいだ。

不測の事態を予測する

「バイブル」には予定されていることは記載されているが、きまって起こる無数の突発的な出来事を予期できない。不測の事態には常に備えていなければならないが、もちろん、これはニュースの仕事では当然のことである。イラクにおける新たな展開。移民や医療をめぐる連邦議会での新しい動き。資金集めの問題で候補者が予備選挙から脱落。その他いろいろある。

筆者のジム・ディッケンソン(左)とナショナルオブザーバー誌編集者のライオネル・リンダー(1972年)

こうした予想外の展開は、記者も編集者も候補者のお決まりの選挙演説に飽き飽きしているため、歓迎されることが多い。選挙演説は、行事が次々と開催されるたびに、それを有難がる新しい聴衆に対して繰り返されるが、記者としては新鮮なトップ記事や、特集・分析記事を常に探さなければならなくなる。しかし、ある候補者の選挙運動の取材で、私は我ながら素晴らしいと考える記事をまとめ、送稿したことがある。内容は、その日の主要行事が候補者の提起する3つの主要課題に関する彼自身の立場を非常によく示しているというものだった。私はその記事に非常に満足し、閉め切り時間のかなり前に送った。ところが、その候補者は次の行事で、対立候補が現在の遊説を開始するにあたって、樹木の葉から出る二酸化炭素が米国東部のある山地における煙霧とスモッグの原因であるという問題のある主張をしたと指摘し、対立候補の環境政策を批判する議論に火をつけたのである。その後数日間、我々はこの問題の取材に奔走することになり、私が何日もかけ、丹精込めて書いた記事は、私には無意味と思える問題によって消し去られたのである。

ラップトップ・コンピュータやPDA、携帯電話などのより新しい技術の普及により、取材で各地を回っている時でも、様々な動きを予測することがますます可能になっている。たとえば、通信社や他の報道機関のウェブサイトをモニターすることも可能だ。突発事件の反響を求めて選挙運動スタッフやアドバイザーを追いかける必要もない。なぜなら、彼らは電子メールで先手を打ってくるからだ。コンピュータやモデムがなかった時代には、取材先から締め切り時間に間に合うように記事を送るのが難しいこともあった。しかし、現在では、携帯電話、無線インターネット接続、およびラップトップで、記事やメモ、背景文書を送受信できる高速ブロードバンド品質のモデムにより、ほとんどの場合、本社のニュースデスクとのコミュニケーションは常時保たれており、即時に連絡をとることが可能である。衛星を含むこうした新技術により、テレビ取材チームの生活も以前より楽になっている。かつては、撮影したフィルムやテープを夜のニュース番組に間に合うよう本社に送ろうとすると、そのための後方支援態勢づくりが大変で、毎日が悪夢であった。

しかし、新技術が導入されると、仕事が増える。ウェブサイトやラジオ局を持つ報道機関の記者は、そのための速報を送ることを1日中期待されている。そして、我々記者のだれも理解できない技術的な理由から、私が在籍した2つの主要紙、ワシントンスターとワシントンポストでは、編集局のコンピュータ化後、第1版の締め切りが午後8時から7時へと1時間繰り上げられた。新技術が導入されたことで、デスクが間の抜けた思いつきを記者に安易に連絡してくることもある。

体力に衰えがなければ、素晴らしい生活である。毎日16時間働き、夕食を午後11時まで遅らせることができる、若くて元気人たちには、格好な生活である。若くてマッチョだったころ(50歳ぐらいまで)は、私にとっても毎日が刺激的な挑戦であった。

私がニュースの仕事をしていることを知った人たちから最も頻繁に聞いた感想のひとつは、「それは面白そうだ。毎日、何か新しいことを学んでいるに違いない」ということだった。「そうなんです」と答えることにしていたが、内心では「まるで分かっていない」と考えていた。


本稿で表明されている意見は、必ずしも米国政府の見解あるいは政策を反映するものではない。






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