embassy seal
U.S. Dept. of State
flag graphic
ホーム
米国のプロファイル
芸術・文化
ビジネス・経済
メディア
環境・科学
日本語の出版物
English
社会
アメリカ政治
法律・条約
教育
地理
日米関係
クィック・レファレンス
FAQs
E-ジャーナル スナップショットUSA
米国人を米国人としているいくつかのこと ― 多元主義と民主主義

ケネス・ジャンダ (Kenneth Janda)

連邦議会の議事堂は連邦政治の中枢である。写真右上に見えるのが連邦最高裁判所の建物。(AP/WWP)

  ケネス・ジャンダはノースウェスタン大学(イリノイ州シカゴ)政治学教授。

  ほかの民主主義国家と比べて、米国政府の構造はきわめて分権的である。合衆国憲法の起草者たちは、権力が一つの政治機構に集中することを極端に警戒し、政府の異なる部門や地位に、権限を意識的に分散しようとした。米国型の分権システムは、徹底した「多数決主義」の民主主義とは対照的である。多数決主義では、政府は国民の多数派の望むものに速やかに応えるような法律を制定し、政策を追求しなければならない。

  米国モデルの民主主義政府、つまり多元的民主主義には、多数決主義より優れている点がいくつかあるが、そこには建国者たちが抱いた国のビジョンが現れている。多元的民主主義では、政府の権力が分散していなければならず、権限が集中してはならない。このモデルによると、民主主義が存在するのは、政府の権限が複数の権力中枢に分散されている場合であり、その権力中枢はさまざまなグループ――例えば、労働者vs経営者、農民vs食料品店、石炭会社vs環境保護運動家――の利害に対して公平に開かれていなければならない。多元的社会ではこのようなグループは互いに競争する。

  多元主義の理論における権限の分散は、政府が、もしかすると無謀かもしれない性急な行動を取るのを防いでくれるが、その一方、主要な権力中枢の意見が一致しなければどんな行動も起こせないということもある。米国の政府を特徴づけているのは分権ではあるが、一部の制度的特色には権力の集中化へと傾くものもあり、これによって政府が政策に関して全体の一致がなくても行動を起こせるようになる。このエッセイでは、米国の政治システムのカギとなる特色が、政治権力の分散と集中のバランスを取るのに、どのように役立っているかを見ていく。

中央権力に対する不信感
連邦議会の両院合同会議で演説するアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領。(AP/WWP)

  英国王ジョージ3世の臣民だった最初の英国植民地13州の人々は、自分たちの生活を国外から支配する強大な中央政府を信用せず、1775年、英国支配に反旗を翻した。1776年の独立宣言は、国王が「これら13州に対して絶対的専制の暴政」をふるったとして非難している。植民地の住民は独立戦争を戦いながら、「連合規約」(反乱を起こした13州で同盟のようなものを創設した文書)の下に「アメリカ合衆国」を形成した。1781年、ついに独立を勝ち取り、同年ようやく「連合規約」が承認され、実施された。

  この連合政府の弱点が明らかになったのは戦後のことだった。権力が分散し過ぎていたのだ。連合政府には徴税権がなかった。執行権を持つリーダーもいなかった。通商を管理統制できなかった。その上、連合規約を修正するには全員一致の賛成が必要だった。1787年、各州代表が規約を改正しようとフィラデルフィアに集まったが、結局、まったく新しい「アメリカ合衆国憲法」を書き上げた。だが、この憲法は強大な権力を持つ中央政府を設置したわけではない。代表たちはまだ、権力分散型でありつつも連合規約で認められていたやり方よりもっと中央集権的に調整できる政府を模索していた。新しい行政機構は、権力の分散と集中をうまく両立させた。その結果、200年以上たっても機能している持続的な政府となったのである。

権力分散化の特色

  米国の政治システムには、権力の分散化を促すたくさんの特色がある。中でも、憲法にも盛り込まれているとりわけ重要な四つの特色は、(1)連邦主義、(2)権力の分離、(3)同等の影響力を持つ二院制の議会、(4)選挙制度(二つの異なる制度)である。

(1)連邦主義

  合衆国憲法の起草者たちは、連合型の政府を連邦型の政府に代えた。連合規約では、「主権と自由と独立」を保持する州の「永久同盟」を誓っていたが、合衆国憲法は主権については何も触れていない。この憲法は「われわれ合衆国の国民は」という文句で始まり、新しい政府は州ではなく個人を代表することをほのめかしている。連邦主義の概念では、二つ以上の同等レベルの政府が、同じ国民と同じ領土に対して権力と職権を行使する。例えば、中央政府(連邦政府)は外敵から国を守るために防衛力を備えるが、州政府は「警察権」を行使して、市民の健康や道徳、安全、福利を守る。連邦政府は州の協力がなければ、これらの領域で行動を起こすことができない。連邦政府は、州のハイウェイ建設が全国的水準に達するように資金を提供したり、州立学校が一定の手順に従えば教育助成金を出したりしてもよい。警察権は州に分権化されているので、連邦政府の権限は、ハイウェイ建設や学校教育の向上、結婚や離婚の規制、犯罪者の処罰でも制限される。ほかにもいろいろあるが、これらすべてが州の管轄下に分権化されている。

(2)権力の分離

  合衆国憲法は、政治的権力を統治機構の三つの部門に分散するシステムをつくり出した。「すべての立法権」を連邦議会に与え、「行政権」を大統領に、「司法権」を連邦最高裁判所および議会により設置された下級裁判所に与えたのである。その上、憲法はさらに権限を分散し、これら3部門が互いにチェックする方法を考え出した。一例を挙げると、議会には立法権が与えられたが、大統領には拒否権が与えられた。しかも、大統領が拒否権を行使しても、議会で3分の2以上の賛成が得られれば法案は成立する。もう一例挙げよう。条約の交渉は大統領の権限だが、上院で3分の2以上の賛成がなければその条約は発効されない。もう一例。議会が最高裁判所の構成を決め、大統領が最高裁判事を指名するが、最高裁判所は議会や大統領の決定が憲法に抵触すると判断すれば、それを無効にすることができる。最後の例に関して注意すべきは、議会や大統領の決定を無効にする最高裁判所の権限は、憲法に明記されていたわけではないということだ。これは、1803年の「マーベリー対マディソン」裁判における最高裁判所の画期的判決のあと、初めて慣例となった。

  こうした権力の複雑な分離が、米国における行政権の分散化に寄与している。大統領は政府の計画を提案できるが、議会は通常、その計画を法案化し成立させることを求められる。その場合でも、その法律が提訴されたら、最高裁判所はこれを無効とすることができる。米国で永続的な法律を成立させるためには、複雑なプロセスを経なければならない。立法は議院内閣制の方がやりやすい。世界の民主主義国家の間では、議院内閣制を採用している国がはるかに多い。そこでは議会の多数党または連立政党が、内閣により提案された法案をだいたい通過させ、ほとんどの裁判所は法律を無効にする権限を制限されてきた。

(3)二院制議会

  米国の立法プロセスにおける権力の分散化は、二院制議会によってさらに促進される。世界には二院制議会(しばしば下院・上院と呼ばれる)の国は多いが、両院の権限がほぼ同等という国はほとんどない。米国の連邦議会の下院は、人口の規模に基づいて各選挙区から選ばれた435人で構成される。下院より少ない上院の議員数は100人で、年齢は30歳以上でなければならず(下院は25歳以上)、任期は6年(下院は2年)と上院の方が長い。上院議員も国民の投票で選ばれることには変わりないが、人口に関係なく各州2人と定められ、時期をずらして(2年ごとに3分の1)改選される。

  合衆国憲法によると、上下両院の権限の違いはごくわずかしかない。歳入に関するあらゆる法案は下院だけが発議できるが、条約や大統領の指名を承認するのは上院に限られている。こうした違いは、法案成立の権限が同等であることに比べれば、たいした問題ではなくなる。法案は大統領が署名する前に同一の形式で各議院を通過しなければならない。その結果、(ほとんどの国と同じように)権限がどちらかの議院に集中するということはなくなり、両院に同程度に割り当てられる。

(4)選挙制度
2004年12月13日、オハイオ州コロンバスの州議会議事堂で投票するオハイオ選挙人団の代表。(AP/WWP)

  米国の選挙制度は一つではなく二つある。一つは大統領を選ぶ選挙、もう一つは議員を選ぶ選挙である。この両方が権力の分散化に貢献している。まず大統領選挙を考えてみよう。米国の大統領選挙は、いわゆる一般投票の過半数を獲得した候補者が勝利するという「全国民的」選挙ではなく、連邦制の選挙であり、「選挙人区」の選挙人538人の過半数(270人)を獲得した候補者が大統領の座に着く。(538という数字は、下院と上院の議席数にコロンビア特別区の持つ3票を加えたもの。)州の選挙人にはそれぞれ1票が与えられており、各州には下院の議席数と同数の選挙人がいる。最小規模の州(下院1人、上院2人)の選挙人票は3票しかない。最大規模のカリフォルニア州には55票与えられる。大統領選挙で投票するということは、実際には、各州の選挙人が投票を誓約している特定政党の候補者に1票を投じるということになる。一般投票のあと、各州の選挙人は州都に集まり、正式に大統領を選出する。(選挙人全員が一堂に会することはない。)各州の一般投票で過半数を得た候補者が、その州の選挙人票をすべて獲得する。従って、大統領候補の選挙運動は国民全体に向けてではなく、それぞれの州に分散して展開される。

  連邦議会の選挙制度も権力の分散を促す。大半の民主主義国家では、比例投票を使って立法府の議員が選ばれる。有権者は政党に投票し、その政党の得票率に応じて議席が配分される。米国では多数決投票によって議員が選ばれる。複数の候補者が小選挙区での議席を争い、最も得票数の多かった候補者がその議席を獲得する。その選挙区で選挙に勝ったのだから、下院議員は出身州と選挙区の要望に応え、再選を目指そうとする。そのため、地元の利益が国家の利益と衝突する場合、地元利益を優先しようとする。

権力集中化の特色

  連邦主義、権力の分離、二院制議会、選挙制度、これらすべてが米国の権力分散化に貢献しており、米国は多元的民主主義のモデルの役割を果たしている。しかし、政治的権力の分割には、政府がまったく行動を起こせなくなったり、国民の大多数の利益より組織化された少数の利益に都合のいい行動を取るようなリスクが伴う。前述したように、憲法の起草者たちは、もともと権力の分散と抑制に心を砕いた。やがて、当時では予期されなかったようなある種の制度上の変更が行われ、それが権力の集中化を助けた。制度上の変更で特に注目すべきは、(1)大統領の地位、(2)2大政党制、(3)最高裁判所、である。

(1)大統領
2006年1月、ホワイトハウスの大統領執務室で、「米国自由部隊」4周年記念の大統領布告に署名するジョージ・W・ブッシュ大統領。この部隊は、2001年のテロ攻撃のあと、米国の社会奉仕活動を促進拡大するためにホワイトハウスによって創設された。(AP/WWP)

  憲法起草者たちは第1条の立法府に2200語以上費やしているが、第2条の行政府にはわずか1000語しか充てていない。多くの起草者は大統領職を、主として、議会が提案可決した法律を実行するのに必要な行政管理職と見なしていた。しかし長い年月がたつうち、大統領は米国の政治体制の中心点となった。現在では、大統領は国の目標を定め、その目標を達成するための法律を提案し、国の法令に財源を与えるための予算案を議会に提出し、もちろん世界情勢においては国益を代弁する。大統領は国内的・国際的危機に対応しながら、通常は議会の協力を得てその職権を拡大してきた。その結果、今では大統領職は最も世論に気を配る職務となっている。その意味で大統領は、民主主義国家の多数決モデルに足並みをそろえて、もっと重要な役割を果たしている。

(2)二院制議会

  政党は1787年まで存在しなかった。選挙で最多票を得た候補者を大統領に、次点者を副大統領に、議会が任命していたのである。1796年の選挙までには議会に二つの政党が誕生しており、この2政党は互いに大統領候補を出して対抗した。勝者ジョン・アダムス(フェデラリスト)は、対抗馬だったトーマス・ジェファソン(民主共和党)を副大統領として受け入れなければならなかった。1804年の憲法修正条項は、政党の出現を認めて、選挙人が正副大統領を別々に投票することを定め、その結果として、政党が正副大統領両候補を公認候補として立てるようになった。しかも議会両院で政党が対立するようになったため、両院間の調整を促した。大統領を出した政党は、大統領と議会との調整を図った。米国の歴史上、ほとんど2大政党が政治の優位を占めてきたことも、権力集中化の一因となっている。米国の政治は民主党と共和党を中心に展開し、どちらかが与党になったり野党になったりする。少数党はほとんど力を発揮できないので、2大政党システムは権力の集中化に貢献している。

(3)最高裁判所

  憲法起草者たちは連邦最高裁判所の規定を設けたものの、それが新しい政府でどういう役割を果たすか、明確なビジョンがあったわけではない。司法府について述べている第3条は400語にも満たず、最高裁判所の権限についてはあまり多く触れられていない。1803年、最高裁判所は全員一致で、司法審査権(議会で可決された法律が合衆国憲法に合致しているかどうかを審査する権限)を強く主張した。この決定により、政治システムにおける最高裁判所の地位は向上し、さらには、賛否両論のある政府の行動については、その最終決定権を最高裁判所に与える結果となった。最高裁判所は、権力の分割されたシステムにおいて最終決定を下す判定者となることによって、権力の集中化を助けた。

結び

  米国のシステムは、統治機関の権力があまりにも分散化されているため、最高水準にある多数決型の民主主義には及ばないとも言われる。しかし権力の分散化があればこそ、多元的民主主義の基準を見事に満たしているのだ。多元的民主主義は権力中枢の多極性を前提とするのだから。米国の政治システムは、民主主義的プロセスの中で意見の対立するグループに公平に開かれており、時間をかけて、徹底した多数決原理に基づくシステムより効果的に、さまざまなグループの利害に配慮する政策成果を生み出すであろう。

この記事の意見は、必ずしも米国政府の考えや方針を反映しているものではありません。




Embassy of the United States HOME |  U.S. CITIZEN SERVICES |  VISAS |  POLICY ISSUES |  STATE DEPT. |  CONTACT US |   PRIVACY |  WEBMASTER