「行政長官の権限はすべて人民から発する・・・」
— エイブラハム・リンカーン、第1期就任演説、1861年
ヨーロッパの主要諸国がすべて世襲君主制を持っていた時代に、限られた任期の大統領制という概念は、それ自体が革命的なものだった。しかし、1787年に採択された合衆国憲法は、大統領に行政権を与え、これが今日まで継続している。また憲法は、副大統領の選出についても規定しており、大統領の死亡、辞任、または能力喪失の場合には、副大統領が大統領職を引き継ぐ。憲法は、大統領の義務と権限をある程度詳しく記述しているが、副大統領や14人の閣僚※ (連邦政府各省の長官)あるいはその他の連邦政府官僚に具体的な行政権限を与えてはいない。(※訳注:2007年現在15人)
強力な権限が集中する大統領職の創設は、憲法制定会議で多少の論議を呼んだ。数人から成る執行評議会を採用していた州がいくつかあったし、この制度は、すでにスイスで何年間か、かなりの成功を収めていた。代議員の1人ベンジャミン・フランクリンは、米国も同様の制度を採用するよう促した。また、大英帝国による過度の権力行使がもたらした苦痛を忘れていなかった多くの代議員は、大統領に強力な権限を与えることを警戒した。しかし結局は、1人の大統領が厳しい抑制と均衡の下で任務を遂行するという考えを支持する派が勝利したのである。
合衆国憲法は、大統領は米国で生まれた米国市民で、35歳に達していなければならないと定めている。大統領候補は、大統領選挙の数カ月前に、各政党によって選ばれる。大統領選挙は、4年ごとに(4で割り切れる数字の年)、11月の第1月曜日の次の火曜日に行われる。1951年に批准された修正第22条により、大統領の任期は2期までに制限されている。
副大統領は、大統領と同じ任期を務める。副大統領は、大統領職を継承する権利を有するほかに、上院の議長を務める。1967年に採択された修正第25条は、大統領職継承のプロセスをさらに詳しく述べたものであり、大統領が職務不能に陥った場合に、副大統領が大統領職を継承することのできる具体的な条件を述べている。また、大統領が回復した場合には再び職務に戻ることを規定している。さらに修正第25条は、副大統領職が欠員となった場合には、大統領が連邦議会の承認を得て、副大統領を指名できることを規定している。
合衆国憲法は、連邦議会に、副大統領以下の継承順位を定める権限を与えている。現時点では、大統領職と副大統領職の両方が欠員となった場合には、下院議長が大統領に就任する。その次に継承権があるのは、上院議長代行(副大統領が欠員の場合に議長を務める、上院が選出した上院議員)で、続いて指定されている順番により閣僚が継承する。
米国の政府の所在地はワシントンDC(コロンビア特別区)である。ワシントンDCは、米国東海岸のメリーランド州とバージニア州に挟まれた、連邦政府の所有地である。大統領の住居兼職場であるホワイトハウスは、ここワシントンDCに位置している。
米国の大統領選出方法は、この国独特のものである。投票用紙に大統領候補の名前が書かれているが、厳密に言えば、国民が直接、大統領(および副大統領)を選出するのではない。各州の有権者は、その州が連邦議会に送っている上院議員および下院議員の人数と同数の大統領「選挙人」名簿に投票する。各州で最多票を得た候補者が、その州の「選挙人票」をすべて獲得する。
全米50州およびコロンビア特別区の選挙人(合計538人)が、いわゆる「選挙人団」を構成する。合衆国憲法の規定に基づき、選挙人団がひとつのグループとして一カ所に集合することはない。選挙後間もなく、各州の選挙人は州都に集まり、その州の一般投票で最多票を得た候補者に投票する。大統領に当選するためには、この538票のうち270票を獲得しなければならない。憲法の規定によると、過半数票を獲得した候補者がいない場合は、下院が決定する。その際、各州の下院議員は、それぞれ一団として投票する。この場合、各州およびコロンビア特別区には、それぞれ1票のみが与えられる。
大統領の任期4年間は、11月の選挙の後の1月20日から始まる(以前は3月からだったが、1933年に批准された修正第20条で変更された)。大統領の最初の公務は、大統領就任式である。就任式は伝統的には、米国連邦議会議事堂の階段で行われる。大統領が一般国民を前に就任宣誓を行い、これは通常、最高裁長官が執り行う。宣誓の言葉は、合衆国憲法第2条に、次のように記されている。「私は合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽して合衆国憲法を維持し、保護し、擁護することを厳粛に誓う(あるいは確約する)」宣誓式に続いて新大統領は、新政権の政策と計画の概要を述べる就任演説を行う。
米国の大統領職は、世界で最も強大な権限を持つ職務のひとつである。合衆国憲法は、大統領は「法律が忠実に執行されるよう配慮し」なければならない、と述べている。この責任を果たすために、大統領は、連邦政府の行政府を統轄する。これは、現役の軍人100万人を含む、およそ400万人から成る膨大な組織である。加えて大統領は、立法と司法においても重要な権限を有する。
行政府において大統領は、国務および連邦政府の機能を管理する広範な権限を有する。大統領は、規則、規制、大統領命令と呼ばれる指令を発令することができる。大統領命令は、連邦政府機関に対して法的な拘束力を持つが、連邦議会の承認を必要としない。また大統領は、米軍の最高司令官として、州兵を連邦の任務に召集することができる。戦時、あるいは国家の非常時には、連邦議会が大統領に、国家経済を管理し米国の安全を守るための、さらに広範な権限を与えることができる。
大統領は、行政府のすべての省庁の長官と、その他多くの連邦政府高官を指名し、上院がこれを承認する。しかし、連邦政府職員の大半は、公務員制度によって選ばれ、能力と経験に基づいて任命と昇進が行なわれる。
憲法は、「すべての立法権」は連邦議会に属する、と規定しているが、大統領は、公共政策の策定者の長として、立法にも大きな役割を果たす。大統領は、議会が可決したいかなる法案に対しても拒否権を発動することができ、上下両院が3分の2以上の票によってこの拒否権を覆さない限り、この法案は法律にならない。
議会が扱う立法の多くは、行政府の主導によって起草されるものである。大統領は、議会に対する年次教書と特別教書の中で、自身が必要と見なす立法措置を提案することができる。議会がそうした提案について決議をせずに休会した場合には、大統領は議会の特別会議を招集することができる。しかし、このような公式な役割を超えて、大統領は、政党の長として、また米国政府の行政長官として、世論に影響を与え、それによって議会における立法の進路に影響を与えることができる。
近年の歴代大統領は、連邦議会との実務的な関係を改善するために、ホワイトハウス内に連邦議会連絡局を設置している。大統領補佐官たちは、重要な立法活動について最新の情報を入手し、両政党の上下両院議員が政権の政策を支持するよう、説得に努める。
憲法で定められた大統領の権限のひとつに、主要な官僚の任命権がある。大統領による最高裁判事を含む連邦裁判所判事の任命は、上院が承認しなければならない。もうひとつの主要な権限としては、連邦法違反で有罪となった者に対して、弾劾の場合を除き、全面的な恩赦または条件付きの恩赦を与える権限がある。現在では、恩赦の権限に、刑期を短縮し罰金を減額する権限も含まれるようになった。
合衆国憲法の下で、大統領は、米国と諸外国との関係について主要な責任を負う連邦政府官僚である。大統領は、大使、公使、および領事を任命し、上院がこれを承認する。また大統領は、外国の大使およびその他の外国官僚を接遇する。大統領は、国務長官とともに、外国政府とのあらゆる公式な接触を管理する。時には、大統領は各国の首脳同士が直接協議する会議を行うこともある。例えば、ウッドロー・ウィルソン大統領は、第1次大戦の終わりに開かれたパリ講和会議に、米国使節団長として出席した。フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、第2次大戦中に連合諸国の首脳らと会談した。以来、どの大統領も、経済と政治の課題を話し合うために、また2国間および多国間協定を結ぶために、世界各国の首脳との会合に出席している。
大統領には、国務省を通じて、在外米国人および在米外国人を保護する責任がある。大統領は、新しい国家や政府を承認するかどうかを決定し、また外国との条約交渉を行う。条約は、上院の3分の2の賛成を得て、拘束力を持つようになる。大統領は、外国との「行政協定」を交渉することもできる。これは上院の承認を必要としない。
大統領の役割や責務は非常に広範にわたり、また大統領は国内的にも国際的にも顕著な存在であるため、政治評論家はこれまで、大統領の権限を大きく強調してきたきらいがある。フランクリン・D・ルーズベルト大統領が任期中に大統領の役割を拡大したことについて、「帝王的大統領制」と評する意見もあった。
新任の大統領が最初に発見する厳しい現実のひとつは、新大統領の引き継いだ官僚組織を管理することは難しく、その方向を変えるには時間がかかるということである。政府の文民職員は全体でおよそ300万人に上るが、そのうち大統領が任命権を持つのは3000人前後にすぎない。
政府の機構は、しばしば大統領の介在とは無縁に機能しており、それは過去の政権においても、また将来の政権においても変わらないことを、大統領は発見する。新大統領は、前政権が未決定のまま残した課題に直面する。新大統領は、就任するよりはるか以前に成立した予算法や、法律で定められた主な支出計画(退役軍人恩給、社会保障給付、高齢者のためのメディケア医療保険など)を引き継ぐ。外交でも大統領は、前任者が在任中に交渉した条約や非公式の協定に従わなければならない。
選挙後の「蜜月時代」の陶酔感が薄れるに従い、新大統領は、議会がより協力的でなくなったこと、そしてマスコミがより批判的になったことに気付く。大統領は、多様で、しばしば敵対的な経済的、地理的、民族的、思想的利益団体との間に、少なくとも一時的な同盟を結ばざるを得ない。法案が可決されるためには、連邦議会と妥協しなければならない。ジョン・F・ケネディ大統領は、「議会で法案を否決することは非常に簡単である。法案を可決することの方がはるかに難しい」と嘆いた。
このような制限はあるが、どの大統領も、立法目標の少なくとも一部は達成し、また拒否権を発動することで、国益に反すると見なす法律の施行を阻止する。戦争と平和の遂行における大統領の権限は、条約交渉における権限を含め、多大である。また大統領は、他に比類のない地位を活用して、見解を述べ、政策を支持することができ、そうした構想や政策は、政敵が示すものより、国民の意識に浸透しやすい。セオドア・ルーズベルト大統領は、大統領が提起した課題は、必ず公共の討論の対象となることから、大統領職のこうした側面を「公職の権威」と呼んだ。大統領の権限や影響力は、限定されているかもしれないが、それでも、公職者、民間人を問わず、他のどの米国民よりも大きい。
連邦法の日々の執行・管理を行うのは、国内外の業務の特定分野を扱うために連邦政府が設置した各省の役目である。大統領が指名し、上院が承認する14省の長官で構成する諮問会議は、通常、大統領の「閣僚」と呼ばれる。各省のほかにも、大統領府に付属する機関が多数あり、その中にはホワイトハウス事務局、国家安全保障会議、行政管理予算局、大統領経済諮問委員会、米国通商代表部、科学技術政策室などがある。
合衆国憲法には、大統領閣僚に関する規定はない。憲法には、大統領が、行政各省の長に、その責務範囲のあらゆるテーマについて、書面で意見を求めることができると規定されているが、省の名称にもその責務にも言及していない。同様に、閣僚となるための資格についても、憲法には具体的な記述はない。
閣僚は、憲法とは別に、実務的な必要に応じて生まれたものである。初代大統領ジョージ・ワシントンの時代でさえも、大統領が助言や支援を得ずにその任務を果たすことは不可能だったからである。閣僚の性質は、時の大統領が作るものである。閣僚の助言を非常に重視した大統領もいれば、多少参考にする程度の大統領もいた。また、わずかではあるが、概して閣僚の意見を無視した大統領もいる。閣僚は、顧問としての役割を果たすか否かにかかわらず、特定の重要分野における政府の活動を指導する責任を有する。
各省には、何千人もの職員がおり、ワシントンだけでなく全米各地に事務所がある。省は、部門や部局、室などに分かれており、それぞれが特定の任務を果たす。
農務省(USDA)は、生産者と消費者のために公正な価格と安定した市場を確保するため、農業生産を支援する。農場収入の向上と維持に努め、農産物の海外市場の開発と拡大を支援する。同省は、貧困層のためにフードスタンプ(食料配給券)を発行し、栄養に関する教育プログラムに資金提供し、また主として子どもや妊婦、高齢者にその他の食糧援助制度を提供することによって、貧困と飢餓と栄養失調の抑制に努めている。農務省は、土地所有者による土壌・水質・森林その他の天然資源の保護を支援することによって、生産能力を維持している。
農務省は、国の成長政策を履行するため、農村開発や融資、保全計画を実施し、農業のあらゆる分野で科学技術研究を進めている。また農務省は、検査・等級制度によって、販売される食品の品質基準を確保している。同省の 農業研究機関は、国家的に優先度の高い農業課題の解決に向けた研究を行うとともに、国立農業図書館を運営し、研究者から一般市民まで幅広い利用者への情報普及に努めている。
農務省海外農業局(FAS)は、米国の農業の輸出促進機関であり、海外で専門家を雇用して、米国の農業と商業の利益のために、海外の農業事情の調査を行っている。米国林野局も農務省の一機関であり、一連の広大な国有林や野生地区を管理している。
商務省は、米国の国際貿易、経済成長、および技術発展の促進を任務とする。同省は、国際市場における米国の競争力向上のための援助と情報を提供している。雇用を創出し、少数民族企業の成長を促進するための制度を運営している。さらに企業および政府の企画立案者のために、経済と人口に関する統計データを提供している。
商務省は、多様な諸機関を擁している。例えば米国標準技術院は、産業界と協力して、技術と計量法と基準を開発し適用することによって、経済成長を促進する。米国気象部を含む米国海洋・大気局は、地球環境に対する理解を深めるよう努め、米国の沿岸部や海洋の資源保護を目指している。特許・商標局は、著者や発明者による芸術作品や発見の占有権を確保することによって、科学や有用な技術の前進を促進する。米国電気通信・情報局は、電気通信政策について大統領に助言をするほか、革新を促し、競争を奨励し、雇用を創出し、より質の高い電気通信を、より低価格で消費者に提供することに努めている。
世界最大のオフィスビルのひとつであるペンタゴンを本拠とする国防総省(DoD)は、米国の軍事安全保障に関連するあらゆる事柄を責任範囲とする。同省は、男女の現役軍人およそ100万人から成る米軍事力を擁する。また、緊急時に軍隊を支援する存在として、合計150万人に及ぶ各州の州兵がある。このほかに、国防総省では、およそ73万人の文民職員が、研究、情報通信活動、地図作成、国際安全保障などの分野で働いている。米国政府の活動を支援するため、極めて専門化された機密情報活動を行う国家安全保障局も、国防長官の指揮下にある。
国防総省は、個別に軍事編成された陸軍、海軍、海兵隊、空軍に加えて、4ヵ所の士官学校と国防大学、統合参謀本部、およびいくつかの特殊戦闘司令部を指揮下に置いている。同省は、外国との条約を履行し、米国の海外領土と通商を守り、航空戦闘と支援のための部隊を提供するため、海外に軍隊を駐留させている。同省の軍事以外の任務としては、洪水対策、海洋資源開発、石油備蓄管理などがある。
米国の教育制度では、学校は主として地方自治体の管理下にあるものの、教育省は、米国の教育の重要な課題への取り組みにおいて全米的な指導を行うとともに、州や地方自治体の意思決定者による学校改善を支援する情報センターの役割を果たしている。同省は、奨学金や、恵まれない学生、障害を持つ学生のための制度、職業訓練制度などを含む連邦教育支援制度の方針決定と管理を行う。
1990年代に教育省が重点を置いた課題は、次のようなものである。すべての学生・生徒の学力向上。授業方法の改善。親や家族の子どもへの教育参加。学校を安全にし、規律を向上させ、麻薬を排除する。学校と職業の関係強化。大学通学や職業訓練のための学資援助の利用方法を改善。学生・生徒全員の技術知識向上への支援、などである。
1970年代に米国のエネルギー問題に対する懸念が高まったことから、連邦議会はエネルギー省を設置した。同省は、それまでエネルギー分野に関与していたいくつかの政府機関の機能を引き継いだ。エネルギー省の各部門は、エネルギー技術の研究・開発・実証、省エネルギー、原子力の平和利用と軍事利用、エネルギー生産と消費の規制、石油の価格設定と配分、エネルギー・データの中央収集・分析プログラムなどを担当している。
エネルギー省は、エネルギー生産による悪影響を最小限に抑えるための基準を設定することによって、米国の環境を保護する。例えば同省では、エネルギー関連の汚染物質とそれが生物系に及ぼす影響の調査など、環境・衛生関連の研究を行っている。
およそ300の各種計画を監督する保健・福祉省(HHS)は、連邦政府機関の中でも、米国民の生活におそらく最も大きな影響を及ぼす機関である。同省の最大の部門である医療財政局が運営するメディケアおよびメディケードの両制度は、米国民のおよそ5人に1人に、医療保険を提供している。メディケアは、米国の高齢者と障害者、計3000万人に医療保険を提供している。メディケードは、低所得者3100万人(うち1500万人は子ども)を対象に連邦および州政府が合同で行う医療扶助制度である。
また保健・福祉省は、世界有数の医療研究所である国立衛生研究所(NIH)を運営している。NIHは、ガン、アルツハイマー病、糖尿病、関節炎、心臓疾患、エイズなどの疾病を対象とする、およそ3万の研究プロジェクトを管理している。このほかにも、保健・福祉省の諸機関は、米国の食糧供給と薬品の安全性・有効性の確保、伝染病の発生防止、アメリカインディアンとアラスカ原住民への医療提供のほか、有害薬物乱用の防止や、依存症治療、精神衛生医療の質を高め、利用し易さの向上などに努めている。
住宅・都市開発省(HUD)は、地域社会の開発を援助し、手頃な価格の住宅を国民に提供するための各種制度を管理する。同省が施行する公正住宅法は、個人や家族が差別を受けずに住宅を購入できるようにするための法律である。同省は、住宅購入を支援する抵当保険制度や、住宅の確保が難しい低所得世帯のための家賃補助制度も実施している。また、地域の再生、都心部の荒廃防止、そして新しい地域社会開発の奨励なども行っている。住宅都市開発省は、住宅市場で購入者を保護し、住宅産業を刺激する各種制度も促進している。
内務省は、米国の主要な環境保全機関として、国内で連邦政府の所有する土地および天然資源の大半について管理責任を負っている。同省の魚類・野生生物局は、野生生物保護地区500カ所、湿地管理地区37カ所、国立魚卵孵化場65カ所と野生保護法執行機関の連絡網を運営している。同省国立公園局は、370カ所を超える国立公園と記念物、景観道路、河川、海岸、レクリエーション地域、史跡を管理し、この活動を通じて、米国の自然遺産と文化遺産を保護している。
内務省は、同省土地管理局を通じて、放牧地の植生やレクリエーション地区から木材・石油生産に至るまで、主として米国西部の何百万ヘクタールにも及ぶ公有地の土地と資源を監督している。同省土地開拓局は、米国西部の半乾燥地帯の各州における乏しい水資源を管理する。また内務省は、米国内の鉱業を規制し、鉱物資源を評価し、アメリカインディアンとアラスカ原住民の部族の委託資源を保護する責任を有する。国際的には、内務省は、米国の領土であるバージン諸島、グアム島、米領サモア、および北マリアナ諸島における連邦政府の政策を調整し、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア連邦、およびパラオ共和国への開発資金を監督する。
司法省は、法律問題や、法廷に関し、米国政府を代表し、要請に応じて大統領および行政各省の長に、法的な助言や意見を提供する。司法省の長である司法長官は、連邦政府の最高法執行官である。同省の連邦捜査局(FBI)は、連邦犯罪に対する主要な法執行機関であり、移民帰化局(INS)は、移民法を施行する。司法省の主な機関のひとつである麻薬取締局(DEA)は、麻薬・規制薬物法を執行し、違法な麻薬密売組織を追跡する。
司法省は、地方警察を援助するほか、全米各地の連邦地方検事や連邦保安官を指揮し、連邦刑務所およびその他の刑務施設を監督し、また執行猶予や恩赦の嘆願について調査し大統領に報告をする。司法省はまた、加盟176カ国の法執行機関の相互支援を促進する国際刑事警察機構(ICPO)とも連携している。
労働省は、米国の賃金労働者の福祉を促進し、労働条件の改善に貢献し、労使の良好な関係を育成する。同省は、職業安全・衛生管理局、雇用基準管理局、および鉱山保安衛生局などの機関を通じて、各種労働法を施行している。これらの法律は、安全で衛生的な労働条件で働く権利や、時給と超過勤務手当て、雇用差別の排除、失業保険、勤務中の傷害に対する労働災害補償などを、労働者に保証するものである。また労働省は、労働者の年金の権利を保護し、職業訓練制度を実施し、労働者の求職を支援する。同省労働統計局は、雇用、価格、およびその他の全国的な経済データの推移を監視し報告する。求職者に対しては、特に高齢者、若者、少数民族、女性、および障害者を援助する活動を行っている。
国務省は、米国の外交政策の策定と実施に総合的な責任を持つ大統領に助言する。国務省は、海外における米国の権益を評価し、政策および将来の活動について勧告し、既定の政策の実施に必要な措置を取る。また、米国と緒外国との間の連絡と関係を維持し、新しい国家や政府の承認について大統領に勧告し、外国との条約や協定の交渉を行い、国連その他の主要な国際機関で米国の立場を代弁する。国務省は、全世界250カ所以上に、外交・領事機関を置いている。1999年に国務省は、米国軍備管理軍縮庁と米国広報・文化交流庁を同省の機構と任務に統合した。
運輸省(DOT)は、10の運営機関を通じて、米国の総合的な運輸政策を確立している。ここには、高速道路の計画・開発・建設、都市大量輸送、鉄道、民間航空とともに水路や港湾、高速道路、石油ガス・パイプラインなどの安全性が含まれる。
例えば、同省連邦航空局(FAA)は、全米各地の空港管制塔、航空交通管制センター、飛行情報局の連絡網を運営している。連邦高速道路局は、州間高速道路、都市部・地方の道路および橋梁の改善の資金援助を各州に提供する。高速道路安全局は、自動車および自動車機器の安全性能基準を設定する。海運局は、米国の商船隊を運営する。米国の海事法の主要な執行機関であり、認可機関である米国沿岸警備隊は、海上での捜索・救助活動を行い、麻薬密輸と闘い、石油流出や海洋汚染の防止に努める。
財務省の任務は、米国の財政および金融に関連する問題に対応することである。同省の基本的な機能は、金融・税制・財政政策の策定、米国政府の財務代行、特殊な法執行任務の遂行、および貨幣・紙幣の製造、の4つである。財務省は、政府の財政状況や国内経済について、連邦議会と大統領に報告する。財務省は、アルコール、タバコ、および火器の、州間通商および国際貿易を規制し、米国郵政公社の切手印刷を監督し、大統領と副大統領、およびその家族、訪米する貴賓や国家元首を警護する特別警護局(シークレット・サービス)を運営し、通貨や証券の偽造を抑制し、米国への物品の流れの規制および課税を行う関税局を運営する。
財務省には、およそ2900の国立銀行の運営に適用される法律を執行する通貨統制官室がある。また、同省内国歳入庁(IRS)は、連邦政府の歳入の大半を占める税金の確認、査定、および徴収を行う。
復員軍人省(VA)は、1930年に独立機関として設置され、1989年に閣僚レベルの省に格上げされた。同省は、有資格の復員軍人とその扶養家族に手当てやサービスを提供する。復員軍人健康管理局は、米国、プエルトリコ、およびフィリピンにある病院173カ所、老人ホーム40カ所、診療所600カ所、高齢者養護施設133カ所、およびベトナム戦争復員軍人支援センター206カ所で、病院および養護施設における医療と、外来の医療・歯科治療を提供している。また、高齢化、女性の健康、エイズ、心的外傷ストレス障害(PTSD)などの各分野における医療研究を行っている。
復員軍人手当局(VBA)は、障害者手当、年金、障害者用の住居改造、その他の要請を監督する。また同局は、復員軍人のための教育制度を実施し、有資格の復員軍人と現役軍人に住宅ローン援助を提供する。復員軍人省国立墓地局は、復員軍人と有資格の家族に、全米116カ所の墓地における埋葬式、墓石、墓標を提供している。
行政府の各省は、連邦政府の主要な運営機関だが、そのほかにも多くの機関が、米国の政府と経済の運営を円滑に行うため、重要な役割を果たしている。これらは、行政各省に属するものではないため、独立機関と呼ばれることが多い。
これらの機関の性質と目的は多種多様である。経済の特定の部門を監督する権限を持つ規制機関もあれば、政府や国民に特定の業務を提供する機関もある。こうした機関の大半は、複雑すぎて通常の立法の手に余る事柄に対処するために、連邦議会が設置したものである。一例を挙げると、1970年に議会は、環境保護の政府活動を調整するために、環境保護庁を設立した。独立機関の中でも最も重要なものには、以下の各機関が含まれる。
中央情報局(CIA)は、いくつかの政府各省・機関による情報活動を調整し、国家安全保障に関連する情報資料を収集して、相互に関連づけ、評価を行い、大統領府の国家安全保障会議に勧告する。
環境保護庁(EPA)は、全米各地の州・地方政府と協力して、大気・水質汚染を管理・抑制し、固形廃棄物、殺虫剤、放射線、および有毒物質にかかわる問題に対処する。同庁は、空気と水の質に関する基準を設定・施行し、殺虫剤や化学薬品の影響を評価し、有毒廃棄物処理場の浄化のための「スーパーファンド」制度を管理する。
連邦通信委員会(FCC)は、ラジオ、テレビ、有線、衛星、およびケーブルによる州間通信と国際通信を規制する。FCCは、ラジオ・テレビ放送局に許可を与え、無線周波数を割り当て、妥当なケーブル料金を確保するための規制を執行する。また、電話・電信会社などの一般通信事業者や、無線通信サービス・プロバイダーに対する規制も行う。
連邦緊急管理庁(FEMA)は、洪水、ハリケーン、地震、その他の自然災害への対応に際して、連邦・州・地方の諸機関の作業を調整する。同庁は、住宅・事業・公共施設の再建のために、個人および政府に財政援助を提供し、消防士や緊急医療専門家を訓練し、全米および米領の各地で緊急計画のための資金を提供する。
連邦準備制度理事会(FRB)は、米国の中央銀行である連邦準備制度を統括する。同理事会は、預金残高と流通貨幣の量を調節することによって米国の金融政策を実施する。同理事会は、民間の銀行を規制し、金融市場が組織全体で陥る危険の抑制を目指し、米国の政府、国民、および金融機関に特定の金融サービスを提供する。
連邦取引委員会(FTC)は、消費者、企業、議会調査、あるいはマスコミの報道によって提起された、個々の企業に対する苦情を調査することによって、連邦独占禁止法および消費者保護法を執行する。同委員会は、不公正あるいは不正な慣行を排除することによって、米国の市場が確実に競争的に機能するようにする。
調達庁(GSA)は、連邦政府の財産、建物、および設備の調達、供給、管理、および維持と余剰物資の売却を行う。また、連邦政府が保有する全車両を管理し、在宅勤務センターおよび保育センターを監督する。
航空宇宙局(NASA)は、米国の宇宙計画を運営するために、1958年に設立された機関である。NASAは、米国初の衛星と宇宙飛行士を軌道上に乗せ、1969年にはアポロ宇宙船で人類を月に着陸させた。今日、NASAは、地球周回軌道衛星や惑星探査機で調査を行い、先端航空宇宙技術の新たな概念を探求し、また米国の有人スペースシャトル軌道周回機を運行させている。
国立公文書・記録管理庁(NARA)は、連邦政府のあらゆる記録を監督することによって、米国の歴史を保存する。各種文書の原本、映画フィルム、音声・映像の録音・録画、地図、写真、およびコンピューター・データなどを保管している。ワシントンDCの国立公文書館には、独立宣言、合衆国憲法、および権利章典が保存・展示されている。
全米労働関係委員会(NLRB)は、米国の主な労働法である全米労働関係法を施行する。同局は、不公正な労働慣行を防止あるいは是正する権限と、従業員が団結し、交渉代表としての組合を組織するかどうかを選挙によって決める権利を、保護する権限を与えられている。
国立科学財団(NSF)は、大小の大学や非営利機関、中小事業機関などに補助金、契約、その他の協定を与えることによって、米国内における科学と工学の基礎研究と教育を支援する。同財団は、官・民・学の協力を奨励し、科学・工学を通じた国際協力を促進している。
人事局(OPM)は、連邦政府の人的資源を扱う機関である。同局は、国家の公務が政治的な影響を受けないようにし、また連邦政府職員が実力に基づいて公正に選ばれ、処遇されるようにする。人事局は、諸機関に人事業務と政策指導を支援し、連邦政府の定年退職制度と医療保険制度を管理する。
平和部隊 ― 1961年に創設された ― は、外国で働くボランティアを訓練し、各国に2年間派遣する。現在、平和部隊のボランティアは、およそ80カ国で、農業・農村地域開発、中小企業、医療、天然資源保全、および教育の各分野で援助活動を行っている。
証券取引委員会(SEC)は、株式や債券を購入する投資家を保護するために設立された。連邦法により、資金調達のために自社の有価証券を販売する企業は、自社の事業に関する報告書をSECに提出し、投資家が重要な情報をすべて入手できるようにすることが義務付けられている。SECは、有価証券の販売における不正行為を防止し罰する権限、および証券取引を規制する権限を与えられている。
中小企業局(SBA)は、中小企業に助言し支援し、その利益を守るために、1953年に設立された機関である。中小企業局は、中小企業への融資を保証し、洪水などの自然災害の被害者に援助を提供し、少数民族が所有する企業の成長を促進し、中小企業が連邦政府に製品・サービスを供給する契約の確保を支援する。
社会保障局(SSA)は、年金、障害者給付、および遺族給付から成る、米国の社会保険制度を管理する。これらの給付の受給資格を得るために、米国の労働者のほとんどが、所得に基づいて社会保障税を支払っている。いくら税金を払ったかによって、その人の将来の給付額が決められる。
米国国際開発庁(USAID)は、開発途上諸国、および中欧・東欧、そして旧ソビエト連邦の新独立諸国(NIS)で、米国の対外経済・人道支援制度を実施している。同庁は、人口と医療、広範な経済成長、環境、および民主主義の4つの分野で各種プログラムを支援している。
米国郵政公社(USPS)は、1971年に郵政省に代わって設置された独立経営の公社によって運営されている。郵政公社は、郵便の集配と輸送、および全米各地の何千もの郵便局の運営を行う。また、万国郵便連合と諸外国とのその他の協定を通じて、国際郵便業務を提供する。同じく1971年に設置された独立組織である郵便料金委員会が、各種郵便の料金を設定する。
任期―選挙人団を介して国民によって選出され、任期は4年。限度は2期まで。
俸給―年俸は2001年1月20日現在、40万ドル。
就任―11月の一般選挙後の1月20日。
資格―米国生まれの米国市民で、35歳以上、かつ14年間以上米国に居住していること。
主な責務―合衆国憲法を保護し、連邦議会が制定した法律を執行すること。
その他の権限―連邦議会への立法勧告、連邦議会特別会期の召集、連邦議会への大統領教書の提出、法案の署名または法案の拒否、連邦判事の任命、連邦政府省庁の長およびその他の主な連邦政府高官の任命、外国へ派遣する使節の任命、外国との間の公務の遂行、軍隊の最高司令官としての機能の行使、米国に対する犯罪の恩赦の実施。
司法省を除くすべての省の長官は「Secretary」と呼ばれる。司法長官は「Attorney General」である。
農務省 – 1862年創設。
商務省 – 1903年創設。1913年に、商務省と労働省の2省に分割された。
国防総省 – 1947年に、陸軍省(1789年創設)、海軍省(1798年創設)、および空軍省(1947年創設)を合体させて発足。国防長官は閣僚の1人だが、陸軍、海軍、空軍の各長官は閣僚には含まれない。
教育省 – 1979年創設。元は、保健・教育・福祉省の一部であった。
エネルギー省 – 1977年創設。
保健・福祉省 – 1979年創設。保健・教育・福祉省(1953年創設)が分割されたときに発足した。
住宅・都市開発省 – 1965年創設。
内務省 – 1849年創設。
司法省 – 1870年創設。1789年から1870年まで、司法長官は閣僚の1人であったが、省の長官ではなかった。
労働省 – 1913年創設。
国務省 – 1789年創設。
運輸省 – 1966年創設。
財務省 – 1789年創設。
復員軍人省 – 1989年創設。復員軍人援護局が省に格上げされた。



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